日本における臨床試験へのオンライン診療の導入状況と今後の方向性

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バーチャル治験シリーズ② 

前回のコラム(1)では、治験のバーチャル化と、その中における治験におけるオンライン診療に関する世界の規制や導入事例をご紹介しました。今回は国内にフォーカスをあて、オンライン診療を用いた患者中心の治験について、規制の動向やオンライン診療の導入の方向性を考えていきます。

治験におけるオンライン診療の国内規制動向

治験に関する国内の代表的な規制としては、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」(以下、「薬機法」といいます。)と、「医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令」(以下、「GCP省令」といいます。)の二つが挙げられます。しかし、この二つの規制含め、オンライン診療を治験で活用するための明確な指針は未だありません。

一方、実臨床では厚生労働省より「オンライン診療の適切な実施に関する指針」(2)が発出されていますが、この指針の中において『治験や臨床試験等を経ていない安全性の確立されていない医療を提供するべきではない。』との言及があります。この記載により、オンライン診療を治験で活用することが許容されていないように誤解を招くことがありますが、そうではありません。

医薬品医療機器総合機構(以下、「PMDA」といいます。)が発出している「新型コロナウイルス感染症の影響下での医薬品、医療機器及び再生医療等製品の治験実施に係るQ&Aについて」(3)の中で、当該実臨床指針の対象としては治験を想定していないことが明記されており、『治験において適切に行われるオンライン診療については、実施して差し支えない。』との見解が既に出されています。

あくまで現時点では、実際にオンライン診療を治験へ導入する場合における規制上の具体な留意点などは明らかとなっていませんが、治験におけるオンライン診療の実施は可能という見解の発出は、大きな一つのきっかけとなり、治験でのオンライン診療の活用検討が国内でも更に進むことが予測されます。

治験におけるオンライン診療の具体的な活用方法は?

オンライン診療の仕組みを治験において活用するには、どのようなケースがあるのでしょうか。診療行為についてビデオ通話を用いてオンラインで実施することを「オンライン診療」と言えますが、治験においても、診療行為である様々な手順が含まれています。

特に、患者さんに副作用が発現していないかの確認などを行う安全性評価のための診察は、治験における非常に重要な診療行為です。この安全性評価をオンライン診療にて担う活用方法が、一つの代表的なケースとなることが期待されます。

具体的には、従来の受診間に追加的にオンライン診療を行うことでより精度の高い安全性評価を目指すことや、イラストのように訪問看護と組み合わせることで、自宅における血液検査なども含めた遠隔での安全性管理体制を構築するなど、患者さんの来院負担を軽減しながらも安全性評価の質を維持又は高め得るアプローチが実装されていくのではないでしょうか。

また、オンライン診療で用いるビデオ通話の機能は、下の表のように、有効性評価や同意説明などといった診療行為とは別のプロセスにおいて活用されていくことも考えられます。

加えて、COVID-19への罹患リスク低減のためにオンライン診療又はビデオ通話を用いて遠隔での治験対応を行う、COVID-19対策としての導入検討が国内でも加速化していくことが想定されます。

以上のように、オンライン診療を治験で活用する方法は多岐に渡りますが、導入を検討する際には、規制当局の見解や実臨床におけるオンライン診療指針などの規制はもちろんのこと、対象疾患や治験薬の特徴などを十分に考慮した上で、事前に試験計画の一部として定めておくことが必要であると考えます。

まとめ

今回は、国内での治験におけるオンライン診療の導入について、規制の動向や活用方法について紹介しました。次回は、オンライン診療などのバーチャル治験が浸透した先にある治験の姿を想像し、どのようになっているのかを考えていきます。

注釈

  1. Digital Health Times:バーチャル治験、知っていますか?
  2. 厚生労働省:オンライン診療の適切な実施に関する指針
  3. 独立行政法人医薬品医療機器総合機構:新型コロナウイルス感染症の影響下での医薬品、医療機器及び再生医療等製品の治験実施に係るQ&Aについて

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