DTx WEST 2024に参加してきました!

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2024年2月21日から2月23日にロサンゼルス ハリウッドで開催されたDTx WEST 2024(1)。MICINメンバーが参加してきましたので、今回の記事ではその簡単なレポートをお届けします。

DTx WESTとは?

DTx WESTとはDTx Conference Series(2)のイベントの一つで、DTxに関する世界最大のサミットです。デジタルヘルス製品の開発が活発になってきた2018年から開催されており、今回で21回目の開催となります。

このサミットの趣旨は、DTxに取り組む企業・政策立案者・アカデミアなど各分野のリーダーが集まり、DTxに関する近況や情報を共有することでイノベーションやコラボレーションを促進し、治療のパラダイムや医療に変革をもたらすことです。

DTx Conferenceシリーズの開始当初は、DTx EAST(米国東海岸、9月開催)とDTx WEST(米国西海岸、2月開催)の年2回の小規模開催でしたが、徐々に参加者も増加しており、現在はDTx Europe(6月開催)とDTx Asia(11月開催)も合わせて年4回開催されています。

今回のDTx WEST 2024には450名以上が参加したとのことです!

DTxとは?

DTx(Digital Therapeutics)は、この数年国際的にも注目を浴びつつある領域で、日本語ではデジタル治療、デジタル療法と訳されることが多いです。かつてはデジタルヘルスという広い概念が用いられてきましたが、製品やサービスの開発が進み多様化していることから、米国のDigital Therapeutics Alliance(DTA)(3)という業界団体が2019年に発表したカテゴライゼーションでは大きく3階層に分類(4)され、最も治療介入要素が高いカテゴリがDTxと定義されています。

なお、DTx製品はプログラム単体のものもあれば、デバイスとセットになっているものもあります。

野村章洋先生(金沢大学)の論文(5)より引用

これまでのDTxカンファレンスでの議論の流れ

MICINは、2021年からDTx Conferenceに参加していますが、この数年でカンファレンスでの議論の中身も徐々に変わりつつあります。2021年はいかにプロダクトとしての臨床的有効性を示していくのかということに焦点があたっていました。そこから米国を中心に様々なDTx製品の開発が進むにつれて、商業フェーズの議論に移行しつつあります。

特に、2023年はDTxのパイオニア企業であったPear Therapeuticsが倒産するなど、業界としても大きな出来事があったこともあり、今回のDTx WEST 2024においても商業フェーズでの議論が中心となっていました。

DTx WEST 2024のトピック

それでは、DTx WEST 2024でいくつか印象的であったトピックをご紹介していきます。

DTxは「避けられない約束された未来」

2023年はDTxのパイオニア企業であったPear Therapeutics社が倒産したことにより、この領域に対する悲観的な見方が一定あったことは否めません。しかしながら、今回のDTx WESTでは、DTxは「避けられない約束された未来」(DTx is “inevitable” future.)という見方がより強まっており、参加者の活発な意見交換が行われていました。

その理由としては、社会全体のデジタル化が進む中で、医療や周辺領域のデジタル化も進んでいるものの、100%デジタル化よりも人(healthcare providerやcaregiver)が介在することが臨床現場でのDTxの効果発揮の鍵となっていることがわかってきているためです。とはいえ、全ての患者のその時その時のコンディションを人が把握して対応することは難しく、そのサポートを行うのがDTx製品に期待されていると言えるでしょう。

「避けられない約束された未来」とは言え、現状DTxの展開にはどの国も苦慮している部分もあります。特に、米国においては、FDA認可を得たものの保険償還されず(米国は民間保険会社が保険償還する)、実質的な社会実装が進まないという課題に突き当たっています。

なぜ社会実装が進まないのか?については、エビデンスが乏しく裾野が広がっていないことがカンファレンスでは指摘されていました。まだ新しい領域であるDTxは、各社が開発競争を繰り広げる中、アカデミックな公表を中々できていないのが現状です。

また、従来の医薬品や医療機器でオーソドックスに行われてきたランダム化比較試験(RCT)はエビデンスの質としては高く、DTx製品もRCTを実施することが望まれますが、その前段階となる小規模な臨床研究の積み重ねとその成果の公表も大事な要素であることも指摘されており、企業だけではなく、アカデミアも連携してこの領域を確立していく必要があることが活発に議論されていました。

医療者のBurn-outをいかに防ぐか?

国によって医療環境は異なるものの、医療者の負担をいかに減らしながら医療の質を維持するのかというのは各国共通の課題といえます。奇しくもDTx WESTが開催された2月下旬、韓国では医師によるストライキが社会問題となっているとして話題になりました(6)が、これも医療者負担が間接的な理由と言えるかもしれません。日本は医療アクセスがどの国よりもよく、そして安価で医療が提供されていますが、その分医療者の負担も大きいことがしばしば問題として指摘されています。個別化医療が注目される中、個々の患者さんにその人に合わせた治療を提供する上で、DTx製品のようなデジタルツールによるサポートが解決策として期待されています。

一方で、”DTx sometimes provides more info – doesn’t it lead to burn out?”という視点もあり、デジタル化が浸透していない医療現場において、この観点は重要です。これもまた各国共通の課題として議論がされていました。

なお余談ですが、筆者がchatGPTに上記を投げ込んでみたところ、以下のような回答が得られました。

DTxが時により多くの情報を提供することは、医療従事者に燃え尽きを引き起こす可能性があります。情報の過剰な提供は、医療従事者が情報を処理し、それに対処するために時間とエネルギーを費やす必要があるためです。これにより、医療従事者が過度にストレスを感じ、燃え尽きのリスクが高まる可能性があります。

これを防ぐためには、以下のようなアプローチが考えられます:

  1. フィルタリングと重要性の設定:DTxが提供する情報をフィルタリングし、最も重要な情報に焦点を当てることが重要です。医療従事者には、その情報が患者の診断や治療計画にどの程度影響を与えるかを理解することが重要です。
  2. カスタマイズされた情報提供:DTxは、医療従事者のニーズや診療科に応じて情報をカスタマイズする機能を提供することが重要です。これにより、医療従事者は自分にとって有用な情報にアクセスしやすくなります。
  3. 教育とトレーニング:医療従事者に対して、DTxの効果的な利用方法や情報の適切な活用方法についての教育とトレーニングを提供することが重要です。これにより、医療従事者は情報の過剰な負担を軽減し、より効果的に活用できるようになります。
  4. テクノロジーの改善:DTxの開発者は、医療従事者が情報をより効率的に処理できるように、プラットフォームやツールの改善に取り組むことが重要です。ユーザーインターフェースの改善やアルゴリズムの最適化などが含まれます。

総じて、DTxが提供する情報の過剰な提供は、医療従事者に燃え尽きを引き起こす可能性があるため、注意が必要です。適切なフィルタリング、カスタマイズ、教育、およびテクノロジーの改善を通じて、医療従事者の負担を軽減し、効果的な利用を促進することが重要です。

chatGPT

どれもなるほどそうだな、というものばかりですが、筆者としては”it’s easier said than done!”という思いであります。

各国のDTxに関連する規制制度について

昨年からDTx seriesが三大陸で分散されて開催されるようになったため、今回のDTx WESTではアジアや欧州圏からの参加者・登壇内容が小規模になりましたが、それでもやはり各国での制度論に関するセッションも盛況でした。話題になっていたのはやはり先行してDTxに関する制度を立ち上げていたドイツのDiGAですが、DiGAを参考としてフランスでもPECANという制度が始まっています。また、ベルギーでもmHealthの新しい承認制度が始まっています。

アジアのトピックとしては、日本においてCureApp社の2製品がPDT(Prescription Digital Therapy)として話題に上がっていましたが、韓国が新たなSaMDに関する制度を立ち上げた(SaMDを医療機器の中でも特化したカテゴリとして確立)という点にスポットが当たっていました。

開催国である米国の話として興味深かったことは、FDAが行った取り組みに対する厳しい見方です。FDAはDTx製品をより早期に市場展開させていくことを狙ってEnforcement discretionという制度を採用していました(7)が、これが逆に保険償還につながりづらい結果になったということを当局関係者も認めています。Payer(=保険会社)目線で行くと、FDAがきちんと承認していない製品と捉えられ、中々コンセンサスが得られなかったことが原因だったと指摘されています。このような背景と市場の冷え込みのダブルパンチにより、米国ではDTx製品単体での保険償還が現状難しくなっていると言われています。

DTxをいかに市場に広めていくのか

このような背景から、米国においてはDTxをいかに市場に出していくのかという点で、製薬企業とIT企業/ベンチャー企業のコラボレーションや低リスク製品(≒Non SaMD)で素早く上市することなどが注目されているようです。より素早く上市することで、RWDを早期から集めに行き、より確固としたエビデンスを積み上げていくことを狙った取り組みと言えるでしょう。

そのほか、Akili社が現在取り組んでいるように、OTCモデル(医療者を介在させないモデル)でのDtoC展開や、DTx単体ではなく医療フローをパッケージ化した形での提供など、さまざまなモデルについて議論が交わされていました。

最後に

DTx Conferenceシリーズは、現在年4回欧米アジアで活発に議論されています。議論の内容は医療環境、医療制度に大きく左右されることもあり、今回のDTx WESTでの議論がそのまま全て日本の開発環境や市場に当てはまるわけではありません。しかしながら、各国共通の課題や参考となる議論はたくさんあります。ご興味ある方はぜひ参加してみてはいかがでしょうか。

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