2022年に議論が進んだ薬局DX〜アクションプランから規制改革中間答申まで〜

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2022年は薬局に関連するDXの流れが大きく進みました。先日、電子処方箋の運用開始が2023年1月26日に決定されたと報道される(1)など、実運用もいよいよ始まろうとしています。今年度の規制改革推進会議でも薬局DXに関する議論が引き続き行われており、来夏に向けた重要分野の一つに挙げられています。

今回の記事では、少し前になりますが、7月11日に開催された厚生労働省の「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」において、薬局薬剤師の業務及び薬局の機能のあり方や具体的な対応の方向性がとりまとめられ、公表された薬剤師が地域で活躍するためのアクションプランについてまずご紹介し、この12月までの関連する議論の推移をまとめます。

「薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループ」は、2021年6月に開催された「薬剤師の養成及び資質向上に関する検討会」のとりまとめ(2)(3)において抽出された薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関する課題の検討を行うことなどを目的として開催されたものになります。

薬剤師が地域で活躍するためのアクションプラン

このアクションプランでは、

  1. 対人業務の更なる充実:処方箋受付時以外の対人業務の充実が必要。また、対物業務を含む対人業務以外の業務の効率化が不可欠
  2.  ICT化への対応:各種医療情報を活用して、薬局薬剤師DXを実現していくことが必要
  3. 地域における役割:地域全体で必要な薬剤師サービスについて、地域の薬局全体で提供していくという観点が必要

という基本的な考え方のもと、具体的な対策として、①対人業務の充実、②対物業務の効率化、③薬局薬剤師DX、④地域における薬剤師の役割が示されています。このうち、今回の記事では「③薬局薬剤師DX」と、その検討に当たって特に議論されたとされる「②対物業務の効率化」についてご紹介します。

対物業務の効率化について

この項では、

  1. 調剤業務の一部外部委託
  2. 処方箋の40枚規制(薬剤師員数の基準)
  3. その他の業務の効率化

が掲げられています。これらのうち、1. と2. の一部については規制改革推進会議医療・介護・感染症対策ワーキンググループにおいても議論された点であり、特に重点事項であると考えられます。

調剤業務の一部外部委託について

これは、対物業務の効率化を図り、薬剤師が対人業務に注力できるようにすることを目的としています。対応方針としては、

  1. 外部委託の対象となる業務:一包化(直ちに必要とするもの、散財の一包化を除く)
  2. 委託先:同一の三次医療圏内の薬局
  3. 安全性:医療安全が確保されるような基準の設定

等が定められました。薬剤の一包化を外部委託した際のプロセス等については以下をご覧下さい。

https://www.mhlw.go.jp/content/11121000/000962998.pdf P9参照

調剤業務の外部委託については、9月22日に開催された内閣府規制改革推進会議医療・介護・感染症対策ワーキンググループでも経団連が要望(4)しており、日本薬剤師会は「安全かつ慎重に進めるべき」との考え方を示していますが、11月28日に開催された規制改革推進会議医療・介護・感染症対策ワーキンググループで、内閣府から医薬品医療機器等法改正前に特区制度を活用して実証事業を実施する案が提出されるなど、現在も議論が続いています(5)

12月22日に開催された第15回規制改革推進会議・第56回国家戦略特区諮問会議 合同会議では、規制改革推進に関する中間答申(案)(6)が公表され、この中で来夏の答申に向けた今後の方向性の重点分野の一つとして「薬剤師の対物業務から対人業務へのシフト(調剤業務の一部外部委託)」と記載されており、来夏までこの議論は続きそうです。

処方箋の40枚規制(薬剤師員数の基準)について

アクションプランでは、調剤業務の機械化等を踏まえ、薬剤師の対人業務を強化する観点から、平成5年に規定された薬剤師数基準の見直しについても言及されています。検討の方向性としては

  • 処方箋の40枚規制の見直しを行う場合は、診療報酬における評価等も含め、対人業務の充実に逆行しないよう慎重に行うべき
  • 調剤業務の一部外部委託を検討する場合、処方箋の40枚規制が一部外部委託の支障とならないように必要な措置を講じるべき

とされていますが、現時点では具体的な対応方針は明らかにされていません。

薬局薬剤師DX

続いて「③薬局薬剤師DX」についてです。今後の薬局薬剤師の役割として、

  • 医療情報基盤により充実する情報を活用した対人業務の質の向上
  • 医療機関への効果的かつ効率的な情報フィードバック
  • ICTを活用した患者フォローアップの充実
  • 患者ウェアラブル端末等から得られる情報も総合的に踏まえた新たなサービスの提供

等が期待され、これにより薬局薬剤師DXを進めていくことが求められています。また、こうした薬局薬剤師DXを進める策として、

  1. 薬局薬剤師DXに向けた活用事例の共有
  2. 薬局外の場所でのオンライン服薬指導
  3. データ連携基盤
  4. その他(調剤後のフォローアップ、電子薬歴の活用等)

が掲げられています。これらのうち、1. 薬局薬剤師DXに向けた活用事例の共有、2. 薬局外の場所でのオンライン服薬指導について一部紹介します。

薬局薬剤師DXに向けた活用事例の共有について

この項では、電子処方箋のモデル事業等を通じて好事例の収集を展開すべきとあり、電子処方箋の仕組みについては、7月25日に厚生労働省が薬局・医療機関向けに説明会が実施されています。

この時の説明会資料(4)によると、電子処方箋は、オンライン資格確認の仕組み(オンライン資格確認等システム)を基盤とした「電子処方箋管理サービス」を通して、医師・歯科医師、薬剤師間で処方箋をやり取りする仕組みであり、重複投薬や併用禁忌がないかのチェックなどに活用していくことが示されています。

電子処方箋活用の具体的なステップとしては、以下のようになっています(7)

1. 患者による「本人確認/同意」患者は、マイナンバーカードでの受付では、顔認証付きカードリーダー上で過去の薬剤情報の提供に同意するか選択し、併せて処方箋の発行形態(電子/紙)を選択
2. 医師・歯科医師による「処方・調剤された情報や重複投薬チェック結果の参照」医師・歯科医師は、処方する薬剤を確定するにあたり、電子/紙の処方箋に関わらず、これから処方する薬剤が過去のお薬と重複していないかのチェックを「電子処方箋管理サービス」で行う
3. 医師・歯科医師による「処方箋の登録」医師・歯科医師は、処方内容を確定した後は、電子/紙の処方箋に関わらず、処方内容を含む電子ファイルを電子カルテシステムなどから電子処方箋管理サービスに登録。電子処方箋を発行する場合は、医師・歯科医師が電子署名等(例:HPKIカード)を用いて署名を行う
4. 患者による「情報の閲覧」電子処方箋管理サービスに蓄積された患者の薬剤データは、マイナンバーカードを用いて、患者自身がマイナポータル等経由で、オンラインでも閲覧が可能
5. 患者による「本人確認/同意」(薬局)患者は、マイナンバーカードでの受付では、顔認証付きカードリーダー上で過去の薬剤情報の提供に同意するかを選択し、併せて患者自身が医療機関で電子処方箋を選択した場合は、調剤対象の当該処方箋を選択することで、電子ファイルが薬局システムに取り込まれる
6. 薬剤師による「処方箋の取得」処方箋の電子ファイルを薬局システムに取り込むタイミングで、処方された薬剤が過去の薬剤と重複していないかを、「電子処方箋管理サービス」でチェックを行い、当該結果も併せて取り込む
※電子処方箋を受け付けた場合、薬剤師の電子署名が必要
7. 薬剤師による「処方・調剤された情報や重複投薬チェック結果の参照」患者からの同意がある場合、薬剤師は過去の処方薬のデータを参照
8. 薬剤師による「調剤内容の登録」調剤後、調剤内容を含む電子ファイルを「電子処方箋管理サービス」に送信

電子処方箋モデル事業は、山形県酒田市をはじめとした全国4地域で10月31日からすでに開始されています。今月初旬のオンラインセミナーでは、「(11月30日時点で)処方箋の登録枚数が3万枚を超え順調に推移している」という報告がされており、着々と本格実装に向けて進められています。

一方、電子処方箋の推進にあたっていまだ各所で議論されているのが電子署名のあり方です。このアクションプランが公開された7月の段階では、例としてHPKIカードが記載されており、これを取得するための施策を国としてもいくつか打ち出している状況でしたが、HPKIカードの普及は芳しくありません。

6月7日に閣議決定された規制改革実施計画(8)でも、電子処方箋の普及を後押ししていくためにはHPKI以外の電子署名が活用されることが必要であると厚生労働省で検討を進める旨の記載がありましたが、現時点ではHPKI以外の代替手段はありません(9)

これについては、医療現場からも期限及び予算の上での対応が難しいという声が上がっており、11月28日に⼀般社団法⼈全国医学部⻑病院⻑会議から「電⼦処⽅箋導⼊に伴う予算措置及び制度改定等の要望書」(10)が厚生労働省に提出されています。特に、多くの医師を雇用する基幹病院においては費用負担は深刻な問題であり、京都大学の黒田知宏医療情報企画部教授は「HPKIはライセンス料が必要で、パソコン1台当たり年間3000円かかる。3000台へのカードリーダーの取り付け費用や、電子カルテ本体改修費3000万円などを合算すると、約1億円かかる見積もりだ。費用全体の7割がHPKIカード関係に費やされる」と指摘しています(11)この点については今後どのような議論がなされるのか追っていく必要があります。

その他、対面における診療での活用のみならず、医療DXの手段であるオンライン診療を活用したスキームも提示されており、今後更なる医療DXの浸透が期待されます。

薬局外の場所でのオンライン服薬指導について

この項については、その名の通り現在薬局内からでしかオンライン服薬指導できない状況を自宅等からの実施も可能とするというものです。こちらについては、

  1. 責任の所在を明確にする観点から薬局に所属していなければならない
  2. 薬局内に居る場合と同等程度に患者の心身の状態に関する情報を得られる体制を確保する
  3. 患者のプライバシー確保の観点から公衆の場で行うべきではない
  4. 騒音、劣悪なネットワーク環境など、服薬指導における適切な判断を害する場所で行うべきではない

などとされており、今年9月30日に同様の内容で改正されました。薬剤師のテレワーク等が進み、子育て・介護等の事由で自宅等にいなければならない薬剤師の方にとって新たな働き方が根付いていくことが期待されます。

アクションプランはどこまで実現されるか?

今回の記事でご紹介したアクションプランは、ワーキンググループで取りまとめられた後、薬剤師の養成及び資質向上に関する検討会や医薬品医療機器制度部会でも議論され、ワーキンググループとは異なり、特に調剤の一部外部委託については、複数の委員からは推進に関して反対意見の表明があったようですが、前述の通り、12月22日に公表された規制改革中間答申(6)でも言及があり、来夏に向けて議論が引き続き行われていくものと予想されます。

なお、アクションプランが公開された7月から12月に至るまでに、厚生労働省では精力的に電子処方箋関連の周知活動をしており、厚生労働省公式HPの特設ページ(12)などを通じて重点的に情報発信がなされています。関係者は一読すべき情報でしょう。

最後に

7月に公表されたこのアクションプランは、医療DXが進められ、オンライン資格確認等システムを通じた各種医療情報の共有、電子処方箋の導入、オンライン診療や服薬指導のルール整備等、ICT等の技術発展に伴い薬剤師を取り巻く環境の急速な変化に対応していくものであり、アクションプランの実行は必要不可欠です。

一方で、その先にいる患者が質の高い、安全安心な医療を受けられることが前提であり、その点が脅かされることがないよう確かな制度設計がなされていくことが期待されます。

参考文献

(1)日経メディカル:電子処方箋、2023年1月26日から運用開始(2022年12月22日)

(2)厚生労働省:薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループとりまとめ~薬剤師が地域で活躍するためのアクションプラン~概要資料

(3)厚生労働省:薬局薬剤師の業務及び薬局の機能に関するワーキンググループとりまとめ~薬剤師が地域で活躍するためのアクションプラン~

(4)内閣府規制改革推進会議:第9回医療・介護・感染症対策ワーキンググループ(令和4年9月22日)

(5)薬事日報:【日薬・山本会長】特区での調剤委託に反対‐「検証前の実施は乱暴」

(6)内閣府:第15回規制改革推進会議・第56回国家戦略特区諮問会議 合同会議(令和4年12月22日) 規制改革推進に関する中間答申(案)

(7)厚生労働省:そうだったのか、電子処方箋(令和4年7月25日)

(8)内閣府:規制改革実施計画(令和4年6月7日 閣議決定)

(9)厚生労働省:電子処方箋導入に向けた準備作業の手引き(令和4年10月 1.1版厚生労働省 医薬・生活衛生局)

(10)⼀般社団法⼈全国医学部⻑病院⻑会議:電⼦処⽅箋導⼊に伴う予算措置及び制度改定等の要望書

(11)MEDIFAX web:「電子処方箋」で重い負担、京都大は1億円  大学病院、組織署名を要望

(12)厚生労働省:電子処方箋

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