COVID-19でオンライン診療はどう変わったか

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2020年4月13日のコラムでは、日本においてオンライン診療がどのように制度化されてきたかを振り返りました。これまで要件が少しずつ緩和されてきたオンライン診療ですが、新型コロナウイルス感染症(以下、COVID-19)の流行拡大により状況が一変しています。今回はCOVID-19によりオンライン診療を取り巻く環境がどのように変わったかをご紹介したいと思います。

初診からオンライン診療が可能に

 最も大きな変更が、2020年4月10日に厚生労働省から出された事務連絡によって、初診からオンライン診療が可能になったことです。2018年に策定されたガイドラインの中では、初診については保険診療、自由診療問わず対面で行うことがルールとして定められていましたが、これが見直されたのです。また、保険診療の場合、従来であればオンライン診療に切り替えるためには最低3ヶ月間の通院実績が必要ですが、この緩和によって、電話や情報通信機器を用いた際の初診料を算定することも可能となりました(*1)。

 また、従来はオンライン診療料を実施できる疾患は糖尿病などの一部の慢性疾患などに限定されていましたが、この疾患の縛りについてもなくなっています。こうした一連の要件緩和はCOVID-19対策のための時限的な措置であるため、3ヶ月ごとに見直すこととなっています。

 一部の地域においては、軽症のCOVID-19患者は自宅や宿泊施設で経過観察することになっていますが、これらの患者に対してもオンライン診療で対応することが可能となりました。

 また、少しさかのぼりますが、2020年2月28日の厚生労働省の事務連絡により、オンラインでの服薬指導も医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律(改正薬機法)の施行を待たずに前倒しで可能になりました。これにより、患者が希望する場合、医療機関から患者の指定する薬局へファックスで処方箋が送信され、患者がオンラインで服薬指導を受けた後に薬を患者宅に配送することができるようになりました。まさに、受診から薬の受け取りまでを自宅から出ることなく完結させられるようになったのです。

院内感染のリスク軽減などに期待

 時限的な措置とはいえ、なぜこれまでとは異次元のスピードで緩和が進んだのでしょうか。それはCOVID-19の感染が急拡大する中、オンライン診療に2つの効果が期待されているからです。

 1つ目が、COVID-19を理由に受診控えしてしまう患者を抑制することです。普段定期通院をしている人も、また体調が悪くなった人も、「感染するのが怖いから」「他の人にうつすといけないからもう少し様子を見よう」等様々な理由で、対面での受診を控えてしまい、重症化を招く可能性が懸念されます。全てのケースにオンライン診療が対応できるわけではありませんが、うつす、うつされるの心配がなくなれば、患者も安心して医療にアクセスすることができます。

 もう1つが、院内感染のリスクを軽減できることです。COVID-19感染拡大初期から、病院は感染リスクの高い場所として注意喚起がなされていました。定期通院をしている患者の中には感染リスク・重症化リスクの高い人も少なくありません。これらの患者の感染リスクを減らすという意味で、オンライン診療は効果的なツールといえます。

 また、院内感染は患者側だけの問題ではありません。現在、多くの医療機関では医療資源が限られる中、患者対応を迫られていますが、COVID-19に感染している患者を不十分な感染防御体制で受け入れることによる院内感染のリスクも問題視されていました。オンライン診療を活用することで、患者に接触することなく、患者の状態をある程度把握することが可能となります。また、必要と判断された場合には速やかに対面診療への切り替えやPCR検査センターへの紹介に繋げられるため、一次トリアージに寄与することが期待されます。

 一連の流れを受け、医療従事者や患者を中心にオンライン診療に対する関心は高まりつつあります。前回のコラムでもご紹介したように、これまでは保険診療における制限が厳しかったことから、オンライン診療は自由診療の領域で活用されることのほうが多かったのですが、この時限的緩和措置をきっかけに一気にその比率が逆転しています。下のグラフはMICINのクロンにおける保険診療及び自費診療の比率の推移になります。

 一方で、これまで厳しく制限されてきたところから急遽大幅に規制緩和されたことから、これから手探りで進めていく部分が多いのも事実です。オンラインの場合の初診料が対面に比べて低く設定されているなど(*2)、医療機関の収益にとっては厳しい面もあります。COVID-19とは長期戦が予想される中、医療業界全体で知見を蓄積しながら、オンライン診療が安全にかつ最大限に効果を発揮できるよう、使い方や制度のあり方を模索しながら必要があるでしょう。

*1:2020年4月から。20年3月までは最低6ヶ月間の通院実績が必要だったが、20年4月の診療報酬改定で要件が緩和された。

*2:対面の場合の初診料は288点に対し、オンラインの場合は214点となっている。

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