毎年6月に内閣府から公表される「高齢社会白書」の令和6年度版が6月21日に公表(1)されました。
高齢化が進み、すべての団塊世代が75歳以上の後期高齢者になる「2025年問題」が迫っている中、労働人口の減少による社会保障費の増大や、医療、介護不足などが懸念されています。また、労働人口の減少のみならず、労働世代が親の介護に直面することになり、仕事と介護の両立問題についても関心が高まっています。
そこで、株式会社MICIN(本社:東京都千代田区、代表取締役:原聖吾、以下MICIN)では、働きながら親や尊属(自分より上の世代の血族)の介護を行っている方を対象に、介護による仕事への影響の有無や、介護でのオンライン診療の利用に関する意識調査を、インターネットで実施しました。(2)
介護に関する意識調査の実施
今回実施した意識調査では、現在働きながら介護を行っている方500名を対象に、自身の仕事への影響や、介護におけるオンライン診療の活用実態や活用意向などを伺いました。
- 調査手法:インターネット調査
- 回答パネル:Mapps Panel
- 調査実施主体:株式会社フォリウム
- 実施期間:2024年5月31日~6月3日
- 調査対象:親やその他尊属(*)の介護を行っている有職者
- 有効回答数:500件
(*)自分より上の世代の血族:例.父母、祖父母、おじ/おば、配偶者の父母など。きょうだい、いとこ、配偶者、配偶者のきょうだい等は含まず
調査対象者の内訳は以下の通りです。
調査結果の概要
調査結果の概要としては以下の通りでした。
介護状況と仕事への影響
- 働きながら介護を行っている人の6割は「通院の送り迎えや付き添い」を行っており、そのうち8割は、通院の送り迎えや付き添いで仕事への負担・影響があるという結果に。通院付き添いのため、勤務時間の短縮や業務量の軽減、在宅勤務への変更などを行っている。
介護でのオンライン診療の活用意向と実態
- 通院の付き添いで仕事に影響がある人のうち、現在介護でオンライン診療を利用しているのは2割に留まるものの、4割強が「介護でオンライン診療の活用を今後予定している」と回答。
- 全体では7割が「今後介護でオンライン診療を活用してみたい」 という結果に。
- 介護でオンライン診療を活用する理由として、半数以上が「勤務時間への影響を少なくするため」と回答。介護者の時間的な負担軽減のほか、被介護者の体力的・精神的負担の軽減も期待していることが伺えた。
それでは、詳細についてご紹介していきます。
調査結果の詳細について
働きながら介護をしている人の介護の内容
アンケート対象者全員(n=500)に介護の内容について確認したところ、具体的には「通院の送り迎えや付き添い」(60.0%)、食事の準備や食事介助(53.6%)、日常生活(買い物等)の送り迎え(49.2%)などが高い結果になりました。
働きながら介護をしている人の、仕事への影響と内容
介護の内容として「通院の送り迎えや付き添い」と回答した人(n=300人)を対象に、通院付き添いで仕事への負担や影響はあるかを質問したところ全体の79.3%が「自身の仕事への負担や影響がある」と回答し、その内容としては「勤務時間の短縮」(48.3%)が最も多く、次いで「業務量の減少」(34.0%)、「オフィスワークから在宅勤務への変更」(32.0%)となり、多くが時間をやりくりしながら対応している状況が分かりました。
介護でのオンライン診療活用による仕事への影響
「通院の送り迎えや付き添いをしている人で、自身の仕事への負担や影響がある」と回答した人(n=238人)に対し、オンライン診療の活用に関して質問したところ、「介護でオンライン診療を活用することで、仕事への影響が少なくなる」と半数以上が回答しました。
介護でのオンライン診療活用の現状
「通院の送り迎えや付き添いをしている人で、自身の仕事への負担や影響がある」と回答した人(n=238人)に対し、介護でオンライン診療を活用しようと考えたことがあるかを質問したところ、「現在活用している・過去に活用したことがある」介護者は20.2%に留まるものの、半数近くになる45.4%が今後活用を予定しているという結果となりました。
介護でオンライン診療を活用したい理由
介護でオンライン診療を「活用したことがある」、「今後活用を予定している」「活用を検討したことがある」回答した人(n=171人)に、「介護でオンライン診療を活用する/活用したい具体的な理由」を複数回答で質問したところ、「勤務時間への影響を少なくするため」(56.1%)という理由が最も高く、次いで「仕事と介護を両立するため」(52.0%)、「待ち時間がなくなるため」(49.1%)と時間に関することが多いことが見てとりました。また、「親やその他尊属の体力的/精神的負担を軽減するため」(45.6%)といった被介護者の負担軽減での活用意向も見られました。
今後の介護でのオンライン診療活用意向
アンケートに協力いただいた方全員(n=500人)に対して、「今後、親やその他尊属の診察の付き添いがある場合に、オンライン診療を活用してみたいか」を聞いたところ、全体の66.6%が活用したい(とても利用したい/やや利用したい)という結果になりました。
介護者自身のオンライン診療に対する意識
アンケートに協力いただいた人全員(n=500人)に対して、ご自身についてのオンライン診療の利用経験や利用意向について確認したところ、以下のようになりました。
オンライン診療の利用が介護者自身の生活にどのようなメリットがあると考えるかについては、「時間の節約」(通院の移動時間や院内待ち時間を減らせる)が最も高い回答結果となりました。
また、オンライン診療の経験の有無で、介護対象者のオンライン診療の経験・利用意向の違いがあるかについても確認したところ、やはりオンライン診療の経験者(n=53人)において介護でのオンライン診療活用経験・利用意向が高いことがわかりました。一方で、オンライン診療の経験がない人(n=177人)でも介護での利用意向が高いことが結果から推察されます。
調査を受けて
調査では、親等の通院送り迎えや付き添いにより、介護者の仕事に負担や影響を及ぼしていることがわかりました。さらに調査を深ぼってみると、仕事に影響があると答えた人の5人に3人は勤務時間を短縮せざるを得ないという結果が出ており、オンライン診療は、介護離職なども懸念されている現代において、介護者と被介護者双方の通院する体力の負担軽減や、通院のための移動時間がかからないという点から、忙しい方々のサポートになると考えられます。また、介護者の7割が「今後介護でオンライン診療を活用したい」と思っていることから、オンライン診療は今後、高齢者の診察においても需要が高まることが期待されます。
最後に、アンケート調査実施後、実際に介護でオンライン診療を活用されている方へのヒアリング機会をいただいたので、利用者の声のご紹介でこの記事を終えたいと思います。
実際に親の介護でオンライン診療を活用されている方の声
母は現在自力で歩くことができない状況で、車椅子で生活をしています。10年以上東京都内のかかりつけ医に診てもらっており、2年ほど前から母の定期的な検診や、咳などの症状が出た際に、オンライン診療を活用するようになりました。
私自身は、フルタイムで働いており、基本は在宅勤務で週一回出社しています。今まで母の通院付き添いの場合は、会社を休むか、土曜日しか連れていくことができませんでした。
母がオンライン診療を受けるようになってからは、自宅で診察時間にスマートフォンで繋ぐだけなので、仕事を休まずに済むようになりました。
母は、オンライン診療になることに特に抵抗感はなく、長年診ていただいている先生とビデオ通話で繋がれるので、安心の表情を見せています。
私自身は、母が通院する場合は時間的な負担以外に、母を持ち上げるのに体力的に辛く、車いすを押して電車の乗り降りがスムーズにできるかというプレッシャーもありました。そのような体力的、精神的な負担もオンラインだとありません。
神奈川県在住 80代の母親(要介護3)の介護にオンライン診療を活用している女性
参考文献
(1)内閣府:令和6年度版高齢社会白書
(2)PR times:-2025年 すべての団塊の世代が75歳以上に- 【介護に関する意識調査】働きながら介護を行っている人7割 「介護でオンライン診療を活用してみたい」