治療に活用するデジタルツールに関する医師を対象とした意識調査

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株式会社MICIN(本社:東京都千代田区、代表取締役CEO:原聖吾、以下MICIN)において昨年実施した、治療に活用するデジタルツール関連製品に対する医師の認知や利用意向などに関するオンラインアンケートの調査結果をご報告します。

調査実施の背景

昨今、官民挙げて医療DXに関する取り組みが加速しています。医療機関における電子カルテの導入は年々増加しており、Web予約・支払の電子化など業務効率化が進んでいます。さらに新型コロナウイルス感染症流行を契機として需要が増したことから、オンライン診療システムの導入なども徐々に浸透しています。

医療DXが推進される中、業務効率のためのツールだけではなく、PHR(Personal Health Record)の診療への活用や、治療に活用可能なデジタルツールであるデジタル療法(Digital Therapeutics、以下DTx)製品も注目を集めています。

そこで今回、医師がこのような治療に活用する新たなデジタルツール(PHR、DTx)関連製品に対してどの程度の認知及び期待を有しているのか、また具体的な活用方法などをどのように捉えているのかについての調査を実施しました。

※当資料内における用語の定義は以下です。
PHR:Personal Health Recordの頭文字をとった略語で、個人の健康・医療・介護に関する情報のこと。
ヘルスケアアプリ:患者が独自かつ自由にスマホ等にダウンロード可能なアプリをいう。医療機関側と情報の連携はない。
医療用アプリ:医療機関側で用意し、患者に提供し、情報を共有するアプリをいう。非医療機器のアプリと医療機器アプリが両方存在する。
治療用アプリ:医療用アプリのうち、医療機器として承認されているものをいう。
HP:勤務医
GP:開業医

調査概要と回答者内訳

調査期間:2022年11月29日〜2022年12月1日

対象者:楽天インサイト(日経メディカル)のモニターである医師

調査方法:楽天インサイトを利用したWeb調査

有効回答数:180人

主な結果

  • PHR・治療用アプリの臨床での活用は現時点でほとんどされていないが、活用意向は一定ある。現時点においては、非医療機器の方が医療機器より導入の検討を考えている医師が多く、導入の決め手として必ずしも医療機器であることは重要視されていない。
  • 導入にあたっては安価・簡易・サポート体制が重要である。関心がない層に対してもアプリの仕組みや使い方をご理解いただくことは導入見込みがあり得る。
  • PHR・治療用アプリともに9割弱が活用したことがない(それぞれ86.1%、88.4%)が、その約半数は活用に関心がある。実際に活用したことがあるのはそれぞれ12.2%、9.4%であった。(Q1.Q5)
  • 活用に関心のある医師のうち、88%の方が治療用アプリを使いたいと回答(Q8)し、治療用アプリの対象として医師が想定する患者は、既存療法の効果が不十分な患者(62.1%)、効果をさらに高めたい患者(51.7%)で、治療用アプリ単独での治療方法(22.4%)を希望する医師は少なかった。(Q9)
  • 治療用アプリには、従来の治療法との併用療法(67.2%)、ポリファーマシーの改善(56.9%)、在宅時の情報を活用した治療方法(51.7%)を期待しており(Q10)、使用検討にあたっては、患者満足度が高いこと(61.8%)が最も重視されている。(Q11)
  • 治療用アプリに関心がない理由としては、対象となる患者を診察していないこと(42.9%)やアプリの仕組みや使い方を理解できないこと(33.3%)が挙げられる。(Q6)
  • 医療用アプリの現時点での導入検討については、非医療機器の方が医療機器より10ポイント高い。(Q2)導入に当たっては、導入・維持費が安いこと(76.6%)、導入に当たってのスタッフ・患者教育の手間がかからないこと(64.9%)、サポート体制が充実していること(61%)を重視している。(Q4)

調査結果詳細

PHR・DTxの認知度は高いが、現時点において診療での活用は浸透していない

 回答した180名の医師のうち、PHRの認知度に関して、PHRという用語を聞いたことがないという医師が28.9%であり、約7割がPHRを何らかの形で認知していたことから、用語の認知度は一定高いことがわかった。一方で、活用経験に関しては12.2%と限定的であり、臨床現場に普及しているとは言い難いが、診療への活用に興味がある医師は44.4%と約半数近くが活用したいというニーズを有していた(Q1)。

 また、DTxという用語を聞いたことがない割合が23.9%であり、8割弱がDTxという用語を認知していた(Q5)。DTxの活用経験のある医師はわずか9.4%であったが、診療への活用に興味がある医師は52.8%と一定のニーズがあることがわかった(Q5)。

 このように、PHR・DTxともに認知は浸透しているが活用実施にまだ至っていない一方で、今後活用したいというニーズが高いことが判明した。

Q1.スマートフォンなどの普及に伴い、院外での日常生活におけるデータが取得しやすくなりました。このように取得される個人の健康医療データを「Personal Health Record(PHR)」といいます。PHRについて、もっともあてはまるものを次からお選びください。(n=180)
Q5.医療用アプリには、医療機器として認可を得ているものと得ていないものがあり、特に、治療用アプリ(行動変容を促すことによって治療介入するようなアプリなど)は医療機器としての認可が必要になります。日本においてはすでに2つの治療用アプリが認可されています。(CureApp SC ニコチン依存症治療アプリ及びCOチェッカー、CureApp HT 高血圧治療補助アプリ)。治療用アプリについて、もっともあてはまるものを次からお選びください。(n=180)

現時点では、医療用アプリが医療機器かどうかは重視されていない

 医療用アプリの導入意向に関して、27.8%の医師が導入予定はないと回答した。非医療機器の医療用アプリをすでに導入している人が5%、導入を検討している人が26.7%であった(Q2)。他方、医療機器となる治療用アプリの導入意向に関しては、すでに導入している人が7.8%、導入を検討している人が16.7%であった(Q2)。また、導入検討においては、非医療機器の医療用アプリ(26.7%)の方が医療機器である治療用アプリ(16.7%)よりも10ポイント程高かった。

現時点においては、医師は医療用アプリの導入において、薬事承認取得の有無についてはを重視されていない可能性が考えられる。年齢別のクロス分析及び開業医・勤務医のクロス分析では、大きな差はみられなかった。

(注釈:なお、本調査実施時において、市場に流通している治療用アプリは2製品のみであり、これらの製品のユーザーとなる属性の医師(内科医師)は本調査上30%程度と限定されていることから、治療用アプリの導入・導入検討の割合が低く出ている可能性がある。)

Q2.スマートフォンなどで収集されるPHRを活用し、診察時だけでなく院外での治療介入なども可能な環境が構築されつつあります。このように治療に活用できるヘルスケアアプリ(患者さんが独自かつ自由にスマホ等にダウンロード可能なアプリをいう。以下同じ)又は医療用アプリ(医療機関側で用意し、患者さんに提供するアプリをいう。以下同じ)に関するご経験についてお伺いします。以下について、あてはまるものをすべてお選びください。なお、医療用アプリには非医療機器のものと医療機器のものがございます。(いくつでも)(n=180)

医療用アプリの導入において医師が重視する要素は「導入・維持費用」であり、また治療用アプリを選択する上での重視する点としては「患者の満足度が高いこと」であった

医療用アプリをすでに活用、もしくは現在導入検討していると回答した医師(77名)に対して、医療用アプリの選択における重視する点を確認したところ、医療用アプリの導入・維持費用が安いこと(76.6%)、導入にあたってスタッフ・患者教育といった手間がかからないこと(64.9%)、サポート体制が充実していること(61.0%)の順で高かった(Q4)。

(Q2で医療用アプリを活用、導入検討していると回答した方のみ)(n=77)Q4.導入する医療用アプリの選択にあたって、重視する点についてあてはまるものをすべてお選びください。(いくつでも)

他方、薬事承認を得ている治療用アプリに限定して使用の意向がある医師(102名)に対して、治療用アプリの選択における重視する点として、患者側の満足度が高いこと(61.8%)が、有効性が十分にあること(53.9%)、安全性が担保されていること(52.9%)よりも高かった。

したがって、有効性・安全性が担保されている治療用アプリにおいても、製品コンセプトの主である安全性・有効性以上に、「患者の満足度」が重視されている傾向が見えた。

(Q8(Q5で「治療要アプリを臨床試験や診療等で活用したことがある、活用に興味があると回答した方を対象に、「治療用アプリを自身の患者に使ってみたいと思うか)で「使いたい」と回答した方のみ)(n=102)Q11.治療用アプリを使うことを検討する場合、重視する点についてあてはまるものをすべてお選びください。(いくつでも)

DTxの使用方法としては、従来の治療法との併用が最も期待されていた

治療用アプリを活用したい、もしくはしばらく様子を見たいと回答した医師(116名)のうち、実際に治療用アプリにおける期待する使用方法に関しては、従来の治療法(薬物療法含む)との併用療法(67.2%)、ポリファーマシーの改善目的(56.9%)、在宅時の情報を活用した治療方法(51.7%)の順で高かった(Q10)。一方、単独治療として使用することは期待されていなかった(Q10)。

(Q8で使いたい、しばらく様子をみたいと回答した方のみ)(n=116)Q10.治療用アプリについてどのような使用方法を期待しますか?あてまるものをすべてお選びください。(いくつでも)

医師がDTxの活用を想定するのは、既存両方の効果が不十分、治療効果をさらに高めたい患者であった

治療用アプリを活用したい、もしくはしばらく様子を見たいと回答した医師(116名)のうち、医師が治療用アプリの使用対象として想定する患者は、既存療法の効果が不十分な患者(62.1%)、治療効果をさらに高めたい患者(51.7%)、アドヒアランスが不良であり密に管理したい患者(48.3%)の順で高かった(Q9)。一方、治療用アプリ単独での治療方法で使いたい医師は22.4%と少なかった(Q9)。

(Q8で使いたい、しばらく様子をみたいと回答した方のみ)(n=116)Q9.治療用アプリをどのような患者に使いたいですか。あてまるものをすべてお選びください。(いくつでも)

DTxに関心がない理由としては、対象患者の診察をしていないことだった

他方、本調査において、治療用アプリに関心がない医師が9.4%(21人)という結果を得た。その理由としては、対象となる患者を診察していないこと(42.9%)やアプリの仕組みや使い方を理解できないこと(33.3%)が挙げられた(Q6)。一方、患者負担への懸念は4.8%と最も理由として重要ではなかった(Q6)。

現在、市場に流通している製品が限られていることがこの結果に反映されている可能性が高いが、今後DTxを導入しやすくするためには医療者・患者双方にアプリの仕組みや使い方を理解してもらうようにサポートしていく必要があることがわかった。

(Q5で興味ないと回答した方のみ)(n=21)Q6.治療用アプリについて興味がない理由について、あてはまるものをすべてお選びください。(いくつでも)

以上

詳細データはこちら:https://micin.jp/wp-content/uploads/230331_Dtx_doctor_survey.pdf

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