【RDD企画】困ったときにオンライン診療が受けられる社会を目指して – 希少疾患当事者対談【後編】

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RDD(Rare Disease Day)をきっかけとしてMICINが出会ったお二人。希少疾患の当事者でありながら、患者会として精力的にご活動されているお二人に、希少疾患におけるオンライン診療の現状と、今後どのようなことが実現されることを期待しているかについてお伺いしました。(※インタビューは2021年6月に実施したものになります。

▶️前編の記事はこちら


大木里美さま

中枢性尿崩症(CDI)の会 副代表。一般社団法人日本遠隔医療学会、市民に遠隔医療をやさしく学んでもらう分科会 会長、RDDオンライン診療実行委員会 代表。当事者として患者会で精力的に活動をするほか、遠隔医療の普及を目指して情報発信をしている。


駒沢典子さま

NPO法人日本ナルコレプシー協会(なるこ会) 事務局長。筑波大学国際統合睡眠医科学研究機構の専門医との交流や、海外の患者会情報にもアンテナを貼り、希少疾患患者の生きやすい社会のために活動している。2021年のRDDオンライン診療のイベントに参加。


コロナ禍で模索されたRDD×オンライン診療

駒沢さま(以下、敬称略):もともと大木さんとは、代表をされているRDDオンライン診療のイベントに参加させていただいたご縁で知り合ったのですが、こうして改めてお話を伺って、中枢性尿崩症の患者さんの抱えている課題にもすごく共通点を感じました。

大木さま(以下、敬称略):私も、駒沢さんのお話を伺って非常に共通点が多いと思いました。希少疾患の種類は違えど、そういう人たちと繋がりたくてRDDオンライン診療の活動をしているので、今回イベントにご参加いただけてお繋がりができたのはすごく嬉しかったです。

駒沢:私たちナルコレプシーの患者は、オンライン診療に反対する人は多くはいないように思いますが。でも、実際にオンライン診療をしている先生はおそらくあまりいらっしゃらない状況でした。緊急事態宣言をきっかけに電話診療を行う医師は増えてきたように思います。普段はやむを得ず県をまたいで通院している患者さんも多いので、オンライン診療を体験した方は「なんて便利なんだ」と感動していました。なので、RDDのオンライン診療のイベント告知を見た時に、「これはいいな」と思い、参加させていただいたんです。

大木:ありがとうございます。今の駒沢さんのお話のようにコロナの影響でオンライン診療が進んだという事例も耳にする反面、中枢性尿崩症の場合は専門とする医師が少なすぎるので、何か仕組みができなければ実現は難しいとも思っています。だからこそ、違った疾患でも情報をシェアいただけると励みになります。

駒沢:そうなんですね。アメリカで睡眠治療をしている日本人医師の方にお話を聞いたのですが、アメリカではコロナ禍になってからすぐにオンライン診療が浸透したそうです。医師は病院側からシステムが導入されたパソコンを渡されて、「とにかく病院には来なくていいからこのパソコンで診察して」と、突然オンライン診療に切り替わったとか!

その先生は過眠症だけではなく睡眠時無呼吸症候群の患者さんも診ているのですが、実際にオンラインでつないでみたら、これまで対面診療では分からなかった患者さんの寝室の状況なども画面越しに知ることができたとおっしゃっていました。

大木:なるほど、家庭での生活習慣が見えるのはオンライン診療の強みかもしれないですね。中枢性尿崩症の場合は他の下垂体の疾患も同時に患っている方もおられるので、そういう方にとっては有効かもしれません。

駒沢:あとやっぱり、対面の診療だと医師とのコミュニケーションの刺激が強いと感じる患者もいますので、そういった患者にとっては、オンラインの画面越しの方が自分のことを話しやすかったりもしますよね。精神疾患などの場合は特に、家から病院まで通って密室の空間にはあまり行きたくない場合もありますし。

ただ、実際の顔色などは画面越しでは分かりにくいですし、対面診療とオンライン診療それぞれのメリット・デメリットはあります。

大木:患者にとって必要な時に、オンライン診療という選択もできることが大事ですね。

医療機関にとって赤字になってしまうオンライン診療

駒沢:先日テレビのニュースを観ていたら、規定によってオンライン診療の方が対面診療の場合よりも安い診療報酬になっていると報道されていました。(※このインタビューは2021年6月に実施。

実は私も電話診療で何か月か受診していた時期があるのですが、対面診療の際に窓口でまとめて支払いをしようと明細を見て、「なんでこんなに安いんだろう?」と驚いたんです。これでは医療機関側も前向きにはオンライン診療を導入できないでしょうし、問題だなと本当に思いました。

医療の現場はシステムの進化が遅いと感じるので、そういったインフラが整えば、これから先の診療の形も変わっていくのかなと。

大木:今の仕組みだと、オンライン診療をやればやるほど医療機関にとって赤字になってしまいますよね。ただ、そういった仕組みの整備以前にも心配なことがあります。

今後オンライン診療の道が開けたとしても、希少疾患がその対象に入ってないと、私たちはオンライン診療を受けられません。今、国で進んでいるオンライン診療の恒久化の議論は、「初診」に焦点が当てられがちですが、果たして初診だけに有効なのでしょうか。初診は対面でも、通院の代わりにオンライン診療ができたら救われる人はたくさんいます。

こういった疑問に対して私たちが声を上げなければ、本当に必要としている希少疾患患者がオンライン診療を受けられなくなってしまうかもしれません。

駒沢:コロナ禍の特例でオンライン診療の規制が緩和されている今だからこそ、次の改正時にどんな判断がされるかに向けて、アクションを起こしていく必要がありますね。

注:本インタビューは2021年6月に実施されたものとなります。令和4年度の診療報酬改定ではオンライン診療に関する診療報酬点数に変更が大幅になされることとなりました。

患者・専門家・企業が同じテーブルに座って議論を深めていく場所を

大木:やっぱり患者と、専門家、そして関心を持ってくださる企業が繋がり、同じテーブルに座って話をしていかないと、オンライン診療の普及はなかなか進まないと思います。

患者会は専門的なことは分からないので、専門家の先生や企業さんの助言があって、一緒に声をあげてくだされば状況は変わるかもしれない。だから、RDDオンライン診療などの機会を設けて、つながる意味があるんです。

駒沢:確かに、私たち患者会は当事者が抱えている問題について語ることはできますし、その現状をサービス開発や調査、法改正などにも役立ててもらいたいです。

繰り返しになってしまいますが、希少疾患の場合はどうしても専門家が少なく、近くに信頼できる医師がいるか否かは「運」でしかありません。遠方の医師のところまで直接通えるのは、経済的にも時間的にも精神的にも余裕もある人。ナルコレプシーに関しては都市に専門医が集中しているので、地方では本当に酷い状況です。困っている患者さんもいますし、オンライン診療が進んでお薬の調整だけでもできるようになる未来になって欲しいと、心から思っています。

大木:そうですよね。だから、RDDオンライン診療を通しての訴えは明確です。「困った時にオンライン診療が受けられる社会へ」。これに尽きますね。

最後に

RDD月間にあわせ、患者会で尽力されるお二人の対談記事を前編・後編に分けて掲載しました。

2022年1月に開催された中医協での審議により、オンライン診療の制度は2022年度から大きく変わろうとしており、オンライン診療の普及が進む可能性が出てきました。医療を受ける患者さんたちのオンライン診療への期待は、開発企業にとっても励みになります。今後も、患者さんたちの声も一緒に、社会に届けられればと思います。

RDD月間は2月末まで。都内で開催予定だった「RDD×オンライン診療」のイベントは残念ながらコロナの影響で延期となってしまいましたが、最終日まで様々なイベントが全国で予定されています。都内ですと、本日2月18日から東京タワーでの写真やパネル展示なども行われるとのこと、お近くにお寄りの際は是非足を運んでみてください。

また、最終日の2月28日に開催されるRDD 2022 in Tokyoではオンライン配信が予定されており、東京タワーのライトアップも予定されています。ご興味のある方はぜひご参加ください。

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